イベント報告・レコード鑑賞会①

10月 27th, 2011

 今日はとても爽やかな風が吹き抜ける予科練平和記念館です。秋風、とこの秋初めて言ってもいいような、たいへん心地よい風が吹いています。この近くで言えば筑波山、少し足をのばせば大子、そして那須、塩原など、山々が紅に染まる様子を思い描ける朝の空気でした。気持ちいい。この言葉以外には何もいらない朝でした。美味しいご飯があれば他には何もいらない、というように。

 

 さて、過ぎる10月22日(土)にレコード鑑賞会を開催しました。

 

 

 

 夕方5時の閉館後、人の気配が館内から落ちて静かなホールに、懐かしい音楽が広がりました。

 

 今回ご紹介したのは7曲です。

「蘇州夜曲」    …映画「支那の夜」(昭和15年・1940年)の劇中歌。

「そよかぜ」     …昭和20年(1945年)10月10日、戦後にGHQ(連合国

                総司令部)の検閲を通り公開された第1号作品。「そよ

                          かぜ」は主題歌。

「リンゴの唄」   …映画「そよかぜ」の挿入歌。こちらの方が大ヒットしました。

「愛馬進軍歌」 …昭和14年(1939年)、平時・戦時を通した国民の馬事思想

                         普及のため、作詞・作曲が募集された歌。

「ヨカレン節」    …昭和19年(1944年)の作品。作曲者は、「決戦の大空へ」

                         「若鷲の歌」と同じ古関裕而。

「決戦の大空へ」

「若鷲の歌」

 

 

 最後の2曲は、予科練平和記念館の日常にも馴染みが深いものです。

 

 昭和18年(1943年)9月に封切られた映画「決戦の大空へ」の主題歌、挿入歌で、特に「若鷲の歌」は大ヒットし、予科練の代名詞とも言える存在になりました。映画は土浦海軍航空隊で撮影が行われ、予科練生も多数エキストラとして出演しました。この映画は当時の日本海軍が飛行機搭乗員を募集する目的で予科練によいイメージを持ってもらおうとした性格をもちます。

 「若鷲の歌」1番の歌詞をご紹介します。

 

 若い血潮の予科練の

 7つ釦(ボタン)は桜に錨(いかり)

 今日も飛ぶ飛ぶ霞ヶ浦にや

 でっかい希望の雲が湧く

 

 私の母は筑波山の麓に生まれ育った戦前の女性ですが、子ども心に何も分からぬまま若鷲の歌を口ずさんでいたそうです。先日も昔覚えたそのままを私に歌って聞かせました。

 飛行機が落ちた、と聞けば友だちと走って見に行ったという終戦頃の生活もあったようです。

 

 このように、歌というものは水が土や岩に染み入るように人の心に刻まれるものなのでしょう。歌詞やメロディーとともに、そこには当時の生活風景も感情もともに織り込まれるのでしょう。

 

 現在のCDで聴く音楽とはまた別のよさがレコードにはあります。音のふくらみ、優しさ、針がレコード盤を引っ掻く音さえ心憎い演出とさえ感じられます。

 

 古いものは淘汰され消えゆくことが多くなっていますが、心の故郷を消す必要はどこにもありません。懐かしい音楽をどうぞ鑑賞に来ていただきたく思います。昔を思い出すことも、昔を想像することも心に元気を満たすことでしょう。

 

 次回は11月12日の土曜日、17時から開催予定です。

 皆様のご来館をお待ちしております。

予科練の神様 その1

10月 23rd, 2011

みなさんこんにちは。

間もなく10月も終わり。

なんだかあっという間ですね。

みなさんはいかがお過ごしでしょうか。

 

 

館内で開催中の特別展「土門拳のまなざし」展も、

10月30日(日)で終了となります。

みなさんにお目見えするのも、今日を入れてあと7日間となりました。

 

 

3ヶ月もの長い間、当たり前のようにあった展示がなくなってしまうことに

一抹の寂しさを感じている学芸員Wです。

 

 

また同時に、事故もなく展示を閉じることができそうでほっとしております。

しかし、遠足は家に帰るまでが遠足。最終日まで気を抜かずに頑張りたいと思います。

 

 

11月末からは、同じ場所で所蔵資料展を開催する予定です。

今度は明治~大正期の除隊記念品と陸軍関係の資料を展示いたしますので、

ぜひお運びください。

 

 

 

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第4回所蔵資料展「重キ務メヲナシオヘテー除隊記念品展」

11月29日(火)~平成24年3月26日(日)

9:00~17:00(入場は16:30まで)

常設展のチケットでご覧いただけます

大人:500(400)円  小中高生300円(240)円

(  )内は20名以上の団体及び各種割引提携カードご提示料金

 

 

  

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さて、先日のブログでもお伝えいたしましたが、

予科練第1期生にインタビューし、そのもようを撮影させていただきました。

1期生で現在お元気でいらっしゃるのは、伊藤さんお一人とのことで、

貴重な機会に恵まれたこと、また、私のようなものが

予科練の神様と言っても過言ではないようなすばらしい方に

お会いできて、本当にありがたく思っております。

 

 

 

1930(昭和5)年、第1期予科練習生として入隊された

伊藤 進さん。

山口県岩国市にお住まいで、現在96歳でいらっしゃいます。

ご自分で立ち上げた会社の会長さんとして、今も毎日ご出社なさっておられる

すごい方です。

 

  

おうかがいした内容は何度かにわけてこのブログでご紹介いたしますが、

今回はそのプロローグとして、伊藤さんのお宅にお邪魔したときの様子を

お話ししたいと思います。

 

 

 

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伊藤さんのお宅におうかがいしたのは10月17日(月)。

西岩国駅にほど近い、閑静な住宅街の一角にお宅がありました。

時間より早く着いてしまい、ご自宅前を怪しげにうろうろしていたカメラマンさんと私を

こころよく迎え入れてくださったのは、とっても上品な伊藤さんの奥様でした。

 

家の中から奥様に負けないぐらい張りのあるお声をかけてくださった伊藤さんは、

紺地にストライプの入った上質なスーツをお召しでした。

多分ご自分に合わせて仕立てられたのだろうと思いますが、肩のあたりもすっきりと

素敵に着こなしていらっしゃいます。

実は伊藤さん、奥様よりも20年早いお生まれだそうですが、第一印象と

お話しした感じでは、まだ6~70代と思われるほどのお若さです。

体中にエネルギーが詰まっているような、そんな印象を受けました。

 

 

お宅にお邪魔してまず驚いたのは、玄関にほこり一つ落ちていないことでした。

通していただいたリビングも同じです。

すみずみまでお掃除が行き届いていて、床はぴかぴかに

磨かれています。

そして、世界中の置物やお人形が飾られており、海外の写真や切り抜きが

壁に貼られています。

 

伊藤さんはこれまで、ご夫婦で何度も豪華客船「飛鳥Ⅱ」で世界中を旅して

いらっしゃるそうで、

行く先々で買い求めたものをたくさんお持ちだということでした。

私が名刺を差し出すと、伊藤さんは

「どの名刺がいいかなー…、じゃああなたにはこれを」

とおっしゃり、飛鳥Ⅱに乗船なさったときにおつくりになったという名刺をくださいました。

ご自身と奥様の顔写真、そして飛鳥Ⅱの雄姿が印刷されています。

 

豪華客船 飛鳥Ⅱ

http://www.ytk.co.jp/cruise/aska2_2011_2012.html?utm_source=google&utm_medium=cpc&utm_campaign=cruise

 

 

もう一つ驚いたのは、伊藤さんの手の爪がきれいに整えられていたことです。

さすが会長さんだけあって、たくさんの人にお会いになって名刺もお渡しになることと

思いますが、

その際に意外と目に付く爪も気を使って整えていらっしゃることに、とても感激しました。

私のほうが手入れを怠っていて、ちょっと恥ずかしいぐらいでした。

 

 

「あなたから手紙をいただいたときにね、力強い文字が書いてあるものだから

もっと年配の方だと思っていたら、お若い方で驚きました。」とおっしゃる伊藤さん。

若くはありませんが若輩者の私にも、美しい敬語でお話しくださいます。

 

知識も豊富で、時々冗談も交えながら世界中を旅した時のお話を聞かせてくださる伊藤さん。

 

一日中日が沈まない白夜をご存知ですか?

白夜の反対で、黒夜というのもあるんですよ。

ずっと太陽があがらないんです。

でも、私は白夜のほうが好きですね。

黒夜は、何にも見えなくてつまらないからね。

 

こんな風に、世界中のお話が次から次へと。

そして豪華客船に乗っている素敵な人たちのお話。

特に、コロラド大学名誉教授で日本文学者のドナルド・キーンさんと

お友達になったくだりは、お二人のウィットにとんだやりとりが目に見えるようで

とても楽しく拝聴いたしました。

 

伊藤さんは決して意見や知識を押しつけず、とてもフレンドリーにお話しくださるので、

世界中にお友達がいらっしゃるというのも納得です。

私も大ファンになりました。

 

 

さて、そんな伊藤さんからどのような予科練のお話しがうかがえたか・・・。

次回ブログをぜひお楽しみに。

 

 

 

 

座り方も威風堂々の伊藤さん。

後ろの掛け軸は、書家になられた元予科練の方から

贈られたものだそうです。

 

一復興への力一

10月 18th, 2011

世界体操選手権大会が首都東京で開催されました。

日本の男子代表選手2名がメタルを獲得しました。
内村選手(22歳)金メタル、山室選手(22歳)銅メタル。
内村選手は大会3連覇を達成しました。

体操日本を印象付けたこと、そして大震災や台風の影響で大変な日本に明るく、
夢が実現した出来事でした。

二人が表彰台に上がり、国歌が流れ、日章旗が掲揚され感無量でした。

白地の中に真紅の丸が・・・。何を意味するのだろう。
白地に赤丸が日章旗として用いられた経緯は諸説が在り、正確には不明だそうです。
しかし、紅白がめでたい配色とされていたようです。

この様な時こそ、日本人の活躍が力となり、復興への希望となるのでは
ないでしょうか。

戦争を知らない若い世代の人たちが先人たちの思いを受け、今日の日本を盛り上げ、
一日でも早い復興の力になってもらいたいです。

若い人たちの活躍が目立つようになりました。皆さん故里が大切なんですね。

これからの日本を背負う、若い人たちの心の支えになればと思っております。

ご来館をお待ちしております。

イベント情報・元予科練生のお話会「私にとって予科練とは」

10月 12th, 2011

  来る11/3(木・文化の日)、元予科練生のお話会を開催します。

 

  今回、講演者を務めていただくのは池田龍雄 氏です。

 

 

  池田様は元甲種13期生で、83歳になった現在もご活躍中の現代美術作家です。全国の有名な美術館に作品が買い上げられ展示されている、たいへん著名な画家でいらっしゃいます。

 

 

  池田様は東京にお住まいですが、先週、お話会の打合せもかねて予科練平和記念館にお出でいただきました。

 

 土浦駅の改札口で待ち合わせご挨拶させていただきましたが、かくしゃくとしていらっしゃいました。予科練生としてかつて厳しく鍛えられた方々を見て私がいつも驚くことは、背筋がピンと伸びて頭脳も明晰、とにかくお若くていらっしゃることです。池田様も年齢を感じさせないお元気さ、若さをお持ちです。土浦駅の長い通路、そして階段をすたすたと歩かれ、私は度肝を抜かれました。でも、池田様はそのようなことで驚く私をかえって意外にお思いかもしれません。

 

  制作、展覧会とお忙しい池田様にとって、土浦・阿見へのご訪問は久しぶりだったとのこと。最後は霞ヶ浦海軍航空隊で終戦をお迎えになった池田様には土浦、阿見は思い出の地と言えるようです。土浦駅周辺の変容ぶり、阿見までの国道125号線沿いの変容ぶりには感慨を持たれたようでした。「私はこの道を歩いたんだよ」とおっしゃっていました。

 

 

  記念館に到着後、館内を見学いただき、お話会の打合せをした後、私は昼食をご一緒させていただきました。二人で同じ丼を食べたのですが、池田様はよくお食べにもなります。まだ若年の私にも少々多めの量だった食事を、池田様も平らげてしまわれました。また私は驚きました。現在も特に持病をお持ちではなく、美味しく食事をされているとのことでした。「でも、習慣で朝はパンなんだ」とお話になりながら「80歳を越えてきたので、いつ何が身に起こるか分からないと考えるようになりました」と言うお言葉も、にわかには信じがたいような目前のお元気さに、私はただただ脱帽です。元予科練生、そして芸術家がもつ優れたバイタリティは、私の憧れと言っても過言ではありません。

 

  池田様は終戦の年、昭和20年に、霞ヶ浦海軍航空隊にて特攻の訓練を受けておられました。6月10日の阿見大空襲も経験され、鹿島灘方面への特攻命令を7月末頃に受けるものの出撃中止。8月15日、17歳の誕生日に終戦をお迎えになり、生まれ故郷の九州へ汽車でお帰りになったそうです。途中、惨状も生々しい広島の光景も目撃されたとのこと。そして戦後、師範学校に入学するも、元下士官であったがためGHQの方針により退学を余儀なくされ画家の道へ進まれました。岡本太郎、安部公房など超一流の芸術家と交わりながら前衛芸術の道を探求し続けてきた池田氏です。11/3のお話会では、予科練での体験、またその体験が人生でどのように生かされたか、たいへん貴重なお話をうかがえると思います。とても楽しみです。

 

 

 私も人の親となってから、自身の来し方を振り返り、人の恩や歩んできた時間の重みなどを改めて考えるようになりました。厳しい逆境にあっても奮起し、自分の人生を切り開いてこられた池田様から、私も大いに学びたいと思っています。

 

 皆様におかれましてもどうぞ足をお運びいただき、貴重な体験談に耳を傾ける文化の日にしていただきたいと希望いたします。

 

  皆様のご来館を心よりお待ちしております。

 

 「私にとって予科練とは」

 時間  14時~15時(予定)

 場所  予科練平和記念館20世紀ホール

      ※ 観覧料が必要となります

グレートミッション

10月 7th, 2011

みなさんこんにちは。

10月にはいり、一気に秋らしくなりましたね。

急激な気温の変化についていけず、またマスクのお世話になってしまった学芸員Wです。

朝晩かなり冷えるようになりましたので、皆さんもどうぞ風邪にはお気をつけください。

 

 

今日はすがすがしいお天気ですが、強い風が吹いて、

まだ細い桜の木をゆらしていました。

 

 

葉っぱの一枚一枚が、「わぁーっ」とさけびながら必死に枝につかまっているように見えて

ちょっと頬がゆるみます。

 

 

この時期は外にでるとどこからともなくキンモクセイの奥ゆかしい香りがしますね。

今週末は三連休でお天気もよく、絶好のお出かけ日和だそうです。

普段学校やお仕事でお疲れのみなさんも、ぜひリフレッシュなさってくださいね。

 

 

連休は仕事なんですけど・・・のみなさん(私も含めて)は、10月9日(日)の夜に

空を見上げてみましょう!

この日は9月の十五夜と対をなすお月見デー、十三夜です。

夜も晴れそうですから、きれいな月が見られるといいですね!

 

 

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さて、学芸員Wには、さ来週とても大きなミッションが待っています。

 

なんと、予科練の第1期生にインタビューできることになりました!!

1930(昭和5)年に入隊した79名のうちのお一人です。

 

 

↑予科練の第1期生です。(『予科練外史』第1巻より)

きっとこの中にいらっしゃるんですね。

 

 

まさに、予科練の生きた歴史、という言葉がふさわしいお方だと思います。

山口県岩国市在住で現在96歳。

ご自分でたちあげた会社の会長さんとして、現在も毎日

ご出勤なさっておられるそうです。すばらしい!!

 

 

私が今までお会いした方の中で、多分一番の先輩だと思われます。

大先輩に対して、私のような若輩者がインタビューさせていただくのは

とても緊張しますが、それを上回るほどお会いするのを楽しみにしています。

予科練のことも、予科練以外のことも、いろいろおうかがいしてみようと思っています。

 

 

インタビューの模様は後日アップいたしますので、ぜひお楽しみに。