「校外学習」

11月 10th, 2020

秋の行楽シーズンに入り、さらに「エール」効果もあり、多くの方に予科練平和記念館にお越しいただいております。また、校外学習などにより10月下旬から11月いっぱいまで小中高校からの多くの予約を頂いておりますし、観光事業者の方からは修学旅行時の見学場所としての問い合わせなども頂いているところです。

 校外学習ですが、学年によってその学習の種別や内容も異なっているようです。遠足や宿泊学習、修学旅行はもちろんの事、自然観察や動植物の採取、公共施設等への見学学習、田植えや稲刈りといった生産活動体験など、様々な校外学習が行われています。

 私たちの子供のころも、小学校の周辺にあった雑木林や霞ヶ浦に、授業の一環として担任の先生に連れられて、様々な自然に触れて学習をした記憶があります。そして、そのような授業のある日は、いつも楽しみにしていたものです。

さて、優秀な航空機搭乗員を養成するために設けられた予科練習生制度、14歳半から17歳程度の少年達は日々体力の訓練はもとより航空機搭乗員に必要な基礎的な教育を受けていました。航空術、砲術、通信術、航海術等の軍事学(兵学)はもとより、国語、代数、歴史、科学、物理等の普通学といった一般の学校と同じ科目もありました。練習生は朝から晩まで隊内で厳しい訓練や教育を受けていたのです。

そんな予科練習生も、季節ごとや訓練の進度ごとに様々な行事が組み込まれていました。隊内生活が基本の練習生にとっては、楽しみでもあり、気持ちの引き締まるものでもあったようです。

年間の行事の中で「行軍」という行事がありましたこれは、予科練習生が集団で外出し、名所旧跡などをまわるもので、土浦海軍航空隊では土浦市内をはじめ、筑波山、水戸、東京、鎌倉、鹿島、香取といった所に行軍行事がありました。また、1月には「兎狩り行軍」などもあり、うさぎがとれなくても、練習生たちは温かい汁粉や豚汁が楽しみであったようです。それ以外にも、陸上戦闘の実習を行うため神奈川県あった演習場での「野外演習」や実際の軍艦に乗りこんで実習を行う「艦務実習」、さらには、昭和11年まで続いた「幕営生活」など、隊外での実習や訓練なども行われていました。これも今でいう「校外学習」であったのだと思います。学校外での授業、隊外での実習訓練、当時と今では教育の視点が異なっているのかもしれませんが、共通するのは今の児童生徒も当時の予科練習生も「校外学習」を楽しみにしていたという事です。

 

 今年は、新型コロナウイルス感染症予防により、学校も臨時休校が長く続いたことによる、学校行事の中止や延期、学習時間の変更等により児童生徒さん、そして学校の先生方には大きな負担になっているのではないでしょうか。そのような中で当記念館を学習の場として選んで頂きまして誠にありがとうございます。入館に当たって多くの制約がありご不便をおかけしますが、児童生徒さんの安全や見学方法等を熱心に打合わせに来ていただく先生もおり、大変ありがたく思っております。予科練平和記念館といたしましても、楽しみにして来られる児童生徒さんのために、万全の態勢でお待ちしております。

古関裕而さんと阿見町

10月 7th, 2020

みなさんこんにちは。学芸員Yです。

朝晩の空気の冷たさ、キンモクセイの香りに秋を感じますね。

いかがお過ごしでしょうか。

 

予科練平和記念館では、先週末10月4日(日)に戦後75周年交流展「7つのテーマで知る

シベリア抑留」が終了いたしました。

この特別展は、東京・新宿にある平和祈念展示資料館との交流展で、同館が所蔵している

シベリア抑留関係の資料を、予科練の7つボタンにちなんで7つのテーマで展示していました。

コンパクトな会場ながら内容の濃い展示でしたので、反響も大きかったように思います。

ご来場くださいましたみなさま、ありがとうございました。

 

 

現在は展示を撤去し、講演会スタイルに模様替えしました。

今後は講演会などの予定も徐々に復活させていこうと考えております。

詳細は決まり次第館のホームページやTwitter、Facebook等でお知らせいたします。

 

 

さて、みなさんは現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説“エール”をご覧になって

いらっしゃいますでしょうか?

 

“エール”特設サイト

https://www.nhk.or.jp/yell/

 

 

ちょうど今日、俳優の窪田正孝さん演じる古山裕一(古関裕而がモデル)が

土浦海軍航空隊に来隊し、“若鷲の歌”を作曲するという場面が放送されましたね。

 

国のために厳しい訓練に明け暮れる予科練生の姿に触れ、彼らに寄り添う曲をと

裕一が一晩で書き上げた哀愁を帯びたメロディ。

少し幼さが残る予科練生たちが合唱する姿が、歌の力と、その後の彼らを待つ

運命を予感させるような、少し胸がざわつく感じの終わり方でした。

 

 

ドラマでは、裕一が土浦海軍航空隊で予科練生たちの訓練を体験し、

彼らの話を聞いて一晩で曲を書き上げた、というストーリーになっていました。

実際には、古関がすでに作曲していた勇ましい長調の曲を携えて常磐線に乗り、

利根川を渡って茨城県に入った頃、ふと頭に短調のメロディが浮かび、

土浦海軍航空隊で教官と練習生にどちらも聞かせたところ、教官たちは

勇ましいほうを選び、練習生は哀愁を帯びた短調のメロディを選んだ、

この短調のほうが現在も歌い継がれる“若鷲の歌”になった、というのは有名なエピソードです。

当時、レコードの販売数が戦時下にも関わらず23万枚という大ヒットで、

「露営の歌」とともに古関裕而の人気を確固たるものにした記念碑的な曲です。

 

“若鷲の歌”は、予科練生たちにとっても、結束を促し、自分たちのアイデンティティを

より強固なものにする役割を果たしていたようです。

 

1945(昭和20)年6月10日、土浦海軍航空隊はアメリカ軍のB-29爆撃機により

大規模な空襲に見舞われました。

この時の状況について元予科練生が次のように証言しています。

少し怖い表現がありますので、苦手な方はスルーなさってください。

 

 

・・・6月10日の空襲だけは、今でも年に何回か夢をみてうなされ、冷や汗をかいて

目が覚めることがある。恐ろしくて上空の敵機の飛行方向を見て逃げる方向を

判断する余裕もなく、練兵場ならば広いから逃げ場所があるのではとひたすら走った。

 みんなで走っている途中で、茨城県西出身のSがバッタリ倒れた。

「S、どうした。ここにいては危ないぞ!」と怒鳴ると、「俺の足がないんだ!」との返事。

よく見ると、たった今、眼前で炸裂した爆弾の破片がSの左足の踵の上部を貫通して

足が入ったままの靴がSの二メートルも先に吹っ飛んでいる。

 血だらけの足が入った靴をSに渡すと、Sは気丈にも「ここにいては危ない、

一刻も早くここを離れろ。俺はここにいる。後で来い。」と、言う。

 悪夢のような空襲が終わった後、急いでSの所に戻ると顔は青ざめて出血もしていたが、

気丈なSが自分自身でやった応急処置が良かったためか、予想以上に元気だった。

 早速、四名の隊員でSを担架に乗せて霞ヶ浦海軍病院まで歩いて運んだ。

途中、Sを元気づけるために若鷲の歌を歌いながら歩いたように覚えている。途中、長い

長い時間に感じた。(『阿見と予科練』より抜粋)

 

 

 若鷲の歌を歌いながら血だらけの同期生を担架で運ぶ予科練生の姿を想像すると、

何とも言えない気持ちになります。

 何に頼ることもできない極限状態の彼らを支え、俺たちは予科練だ、負けるものかと

友を運ぶ足を前に進める力をくれたのが若鷲の歌だったのでしょう。

元予科練生が当館によくいらしていたころ、若鷲の歌を歌ってくださる方も

たくさんいらっしゃったなぁ・・・と、ちょっと寂しい気持ちで思い出しました。

 

 

 予科練平和記念館では、若鷲の歌のワンフレーズが書かれた

古関裕而さんの色紙を展示しています。

 また、“エール”で予科練を紹介する際に使われていた映像も

館内の展示室でご覧いただくことができますよ。

古関裕而さんの色紙と若鷲の歌のレコードです。

展示室1「入隊」で展示しています。

 

 

予科練平和記念館がある阿見町は、実は古関裕而さんとつながりが深いのです。

町内には小中学校が全部で10校ありますが、町立阿見第二小学校と、町立朝日中学校の

校歌は、古関裕而さんの作曲なんです。

 

朝日中学校は1980(昭和55)年に新設されましたが、初代の校長先生は

なんと!元予科練生です。

1943(昭和18)年5月に乙種第20期予科練習生として土浦海軍航空隊に

入隊した仲川武男さん。初代の朝日中学校校長先生としての体験を次のようにお話ししてくださっています。

 

 

 ・・・初代の校長でしょう。校歌はなし、校訓はなし何もないでしょう。それで困った。

まず校歌、校訓を作らなきゃならない。そこで白羽の矢を立てたのが、予科練の「若鷲の歌」を

作ってくださった古関裕而先生。あの先生は私が昭和18年に予科練に入隊し

基礎訓練中に東京からおいでになり作曲を披ろうしてくれた方です。

 そういう恩恵があったかそれが縁かなにか分かりませんが、ちょうど古関先生の弟さんが

阿見においでになってます。その弟さんも何かの拍子で知り合いになったから援助してもらい、

古関先生に作曲してもらいました。作詞は「高校三年生」の丘灯至夫先生。

 ・・・二回くらいかな古関先生の家までお邪魔して、いろいろとお話ししてお願いしてきました。

(『続・阿見と予科練』より抜粋)

 

 

古関裕而さんが土浦海軍航空隊にいらした時、仲川さんも予科練生として同じ場所にいらっしゃり、

後年ご自身が校長先生になられた時に、また古関裕而さんとつながって、

たくさんの生徒さんたちが歌う校歌が誕生していたんですね。

 

実は、当館で展示している古関裕而さんの色紙は、この仲川武男さんが寄贈してくださったものです。

不思議なご縁がつながっているなぁと感じます。

 

 

古関裕而さん、丘灯至夫さんは生まれ故郷の福島県に記念館があります。

こちらもよろしければチェックしてみてくださいね。

ご来館の際には、開館状況やコロナウイルス対策の状況などをホームページやお電話でご確認いただけると確実です。

 

古関裕而記念館

https://www.kosekiyuji-kinenkan.jp/

 

丘灯至夫記念館

https://www.town.ono.fukushima.jp/soshiki/13/toshio-oka.html

 

 

 

 

 

 

天高く馬肥ゆる秋

10月 4th, 2020

9月下旬、今シーズン初めて台風12号が関東地方に近づきました。勢力もあまり大きな台風ではなかったため、大きな被害はありませんでしたが、「実りの秋」を迎えた農家の方にとっては気をもんでしまったのではないでしょうか。

 さて、台風が通過し、やっと厳しい夏から爽やかな秋の訪れを感じる季節となってまいりました。他の季節が好きな人には秋の訪れはさほど嬉しくないかもしれませんが、それでも秋の爽やかさは格別なものです。そのためでしょうか、秋は他の季節と比べ物にならないほど「〇〇の秋」と表現されることが多い季節です。「芸術の秋」「食欲の秋」「読書の秋」「スポーツの秋」・・・と、調べてみると多くの秋が新聞や雑誌に取り上げられております。それほど秋の訪れは私たちの生活の中で特別なものとなっているのかもしれません。

 また秋になると、時候の挨拶などにもよく使われる「天高く馬肥ゆる秋」という諺を思い浮べます。秋の素晴しさを表現した言葉で、「天高く」とは空が晴れて澄み渡っている様子を表し、「馬肥ゆる(馬肥える)」とは、馬の食欲が増してたくましく太ることを表現しているということです。この諺は中国唐代の詩人・杜審言(としんげん)が書いた詩にある一節からきたもので、正しくは「秋」が最初になる「秋高くして塞馬(さいば)肥ゆ」ですが、日本では「天高く馬肥ゆる秋」として定着したそうです。しかし元々の意味は「秋の素晴しい季節」を表現したものではなく、「警戒をしろ」と注意を促す言葉でした。匈奴(きょうど)という騎馬民族が秋になると北のほうから肥えてたくましくなった馬に乗って略奪に来るから気をつけろということを伝えるために、「雲浄(きよ)くして妖星(ようせい)落ち、秋高くして塞馬肥ゆ」と読んだといわれています。

新しい生活様式の実践の中で感染防止と社会経済の両立が大きな課題になっていますが、GoToトラベルの実施やイベント開催の制限が緩和されたことに伴い、9月下旬から観光地やイベント施設、交通機関等に多くの人の流れが戻ってまいりました。これまでどこにも行くことができず我慢していた方も、やっと「行楽の秋」を満喫できそうです。くれぐれも「警戒」を怠ることなく楽しい「〇〇の秋」を過ごしていただきたいと思います。

 予科練平和記念館から見た秋の空も清々しく爽やかな青空が広がっています。どうぞ皆様方のご来館をお待ちしております。

弱虫ペダルスタンプラリーやってます

9月 29th, 2020

みなさんこんにちは。学芸員Yです。

日増しに秋の気配が深まってきていますね。

いかがお過ごしでしょうか。

 

あの・・・予科練平和記念館には、多分ですが、本当に時間を食べる何かがいるかもしれません。

日々コロナ対策に振り回されてしまい、こんなにブログに時間を割けないとは・・・。 

前回の更新から1か月以上経ってしまいました・・・。

いや、自分の怠慢なのだと思いますが、それにしても、と言う感じです。

しかし今年もあと3か月。気合を入れなおしてアップしていきたいと思います。

 

 

さて、予科練平和記念館では、11月30日(月)まで

「弱虫ペダルデジタルスタンプラリー ウォーク&ライド」に参加しています。

 

「弱虫ペダル」は、現在「少年チャンピオン」で連載されている人気少年漫画で、

アニメ化もされています。

コミックスはなんと68巻まで出ているそうです!

今年の夏には、アイドルグループKing&Princeの永瀬廉君主演で実写映画化された

今とても勢いのある作品なんです。

 

 

このデジタルスタンプラリーは、茨城県南15か所に配置された

弱虫ペダルのキャラクターのポスターについているQRコードをスマホで読み込むと

スタンプをゲットできるというもので、

スタンプをためるとオリジナルクリアファイルなどがもらえます!

 

お隣の土浦市にあるJR常磐線土浦駅には、主人公小野田坂道君のポスターと、

主要キャラの等身大パネルやフォトスポットもありますよ。

 

詳しくはコチラ↓

https://arweb.jp/playatre/

 

 

そして、当館に来てくれたのは「青八木 一(あおやぎ はじめ)」君です!

青八木くんのQRコード付きポスターは、予科練平和記念館の外にある

正面入り口付近の掲示場と、館内ラウンジの掲示板の2か所に設置しています。

外にある掲示板は、予科練平和記念館が閉館している時でも撮影OKです!

館内ラウンジの掲示板は、どなたでも自由に出入りできるフリースペースにございますので、

もしよろしければこちらもご覧になってください。

館内にいる青八木君のほうが、ポスターのサイズが大きいですよ!

 

↑館の外正面入り口付近の掲示版

 

館の入口を入って突き当りを右に曲がっていただくと、

大きい青八木君がいます。

 

 

また、予科練平和記念館は広域レンタサイクルの貸出ステーションにもなっています。

WEBからご予約いただき、予科練平和記念館で自転車を借りて、

霞ヶ浦や筑波山を見ながら気軽にサイクル旅が楽しめます!

ご利用のお客様を見ていると、思ったより遠くへ行ってしまった、という方や

すてきに日焼けして帰ってこられる方など、みなさん楽しそうです。

マスクを外して、深呼吸しながら全力で自転車を漕いだら、きっと気持ちがいいですね!

貸出できる自転車は、ロードバイクやクロスバイクのほか、お子様用や二人乗り用など

用途に合わせてご用意があります

もしよろしければ、この秋のアクティビティ候補に加えてみてくださいね。

 

詳しくはこちら↓

https://www.ringringroad.com/rentalcycle/

 

 

今週木曜日、10月1日は中秋の名月です。

いろいろと先行きが見通せず、ともすれば気持ちが落ち込んでしまいがちなニュースが

日々目に飛び込んでくるこの頃。

この日の月がとっても美しくて、みんなが月を見上げてちょっとほっとして、

少し気持ちが軽くなる日であったらいいなぁと思っています。

みなさんの日々が、少しでも心安く穏やかでありますように。

すてきな名月をおむかえくださいね。

 

 

 

厳しい残暑

9月 4th, 2020

新型コロナウイルスは、世界中に蔓延し人々の生活や経済を混乱に陥れています。また、日本では異常気象により梅雨明けが遅れ、やっと明けたと思った8月は異常な暑さで、多くの方が熱中症により救急搬送されるという事態になっています。新型コロナウイルスと熱中症、今年はこの二つの厄介なものと付き合わなければならない煩わしい夏でありました。

 予科練平和記念館は通常開館してもうすぐ3か月が経とうとしています。今年は終戦記念日の無料開館や夏休み期間における子供たちとふれあうイベントも中止になってしまいました。返す返すも残念でなりません。それでも夏休みには、多くの小学生・中学生が家族と一緒に見学に来られました。ありがとうございました。

 さて、暦の上では既に立秋を過ぎ、予科練平和記念館の桜の葉も8月下旬から落葉が始まりましたが、まだまだ暑い日差しが照り付け残暑厳しい夏が続いています。

土浦海軍航空隊で毎日厳しい訓練をしていた当時の予科練習生達、エアコンもない隊舎の中で暑い夏をどのように乗り切っていたのでしょうか。熱中症になる訓練生もいたのではないでしょうか。それでも、厳しい訓練に耐え国のためにと懸命に努力する姿を思い浮かべた時、つくづく頭が下がる思いがします。

「暑さ寒さも彼岸まで」と言いますが、秋を思い、冬を恋するこの季節、早く涼しい季節が訪れること願うばかりです。

 まだまだ厳しい残暑が続きます。くれぐれも新型コロナウイルスと熱中症には気を付けてください。

博物館実習中です

8月 28th, 2020

みなさんこんにちは。

学芸員Yです。

毎日暑い中にも秋の気配を感じるころとなりましたね。

いかがお過ごしでしょうか。

朝晩の風の涼しさ。日暮れとともに聞こえてくる虫の声。

日没も早くなってきました。

2020年の夏も過ぎようとしていますね。

 

前回のブログ更新が7月。

まめに更新したいと思いつつも、日々コロナ対策と問い合わせ対応に追われてしまっていました。

時間が驚くほど速く過ぎるので、予科練平和記念館のどこかに時空のゆがみが

あるんじゃないか、と検温用のサーマルカメラで探してしまいそうになります。

たまる一方の仕事と問い合わせ対応のための資料が机の両端に積み重なり、

新たな地層が出現中。

コロナ…どこでも大変ですよね…。

みなさん本当に本当にお疲れ様です。

 

さて、今週火曜日から博物館実習が始まりました。

博物館実習は、学芸員資格取得のために実際の博物館で実習を行うものです。

今年は2名の大学生が実習に来てくれています。

先日は当館の歴史調査委員大橋さんによる講義に続き、元予科練生のお話を聞きました。

 

 

大橋さんは、歴史を伝えるということ、その中で学芸員が果たす役割について

お話をしてくださいました。

また、元予科練生の戸張さんは、予科練とはどのようなところだったのかを

ご自身の体験も交えて伝えてくださいました。

 

 

実際に体験された方のお話は、どんな解説文よりも説得力がありますね。

戦争の歴史を伝える博物館、資料館は、今後どのように語り部事業を行っていくか

悩みどころです。

戸張さんには、ご無理のない範囲でこれからも多くの方に体験を伝えていただけたら

ありがたく思います。

まさに予科練平和記念館の宝物です。

 

 

博物館実習3日目の昨日は、資料のクリーニングとデータ入力を行いました。

クリーニングするのは、阿見村と合併する前の旧朝日村役場の行政文書です。

昭和初期に作成された文書の一部を予科練平和記念館で保管しているのですが、

時間がなくてなかなか細かくクリーニングしてあげることができずにおりました。

こうして学生さんが来てくださるととても助かります。

 

一枚一枚刷毛をかけてほこりを落とし、傷み具合をチェックしていきます。

慎重に慎重に進めてくださっています。

 

 

 

紙がもろくなっているので最初は触れるのに緊張しますが、

クリーニングの数をこなしていくと、どこに気を付けて

どのように扱えばよいかの感覚がだんだんと身についてきます。

 

文書のクリーニング作業は非常に地味で時間もかかるものです。

でも、この手間こそが未来へ資料を伝えていく基礎になります。

 

博物館での展示等で一般の方の目に触れる資料は氷山の一角です。

見えないところにも様々な資料が眠っていて、そうしたすべてをできる限り未来へつなげていくのが

学芸員の大切な業務になってきます。

 

 

クリーニングと同時に、資料の写真データに資料番号を入力する作業も行います。

 

 

 

こちらも手間のかかる作業なのですが、手際よく進めていただいてとても助かりました。

 

 

本日は展示の監視や窓口業務を体験中。

大きな博物館であれば、こうした業務は専任の職員を配置するのですが、

私どもは小さな館なので、学芸員も館のすべての業務にかかわります。

内側の仕事とはまた違った角度から、展示やお客様の導線なども考えることができるのではと

思っております。

 

 

実習最終日の今週土曜日には、ご本人たちがこのブログと館の公式Facebook、Twitterに

登場します。

もしよろしければ、こちらもご覧いただけましたら幸いです。

 

 

まだまだ暑い日が続いています。

水分、塩分、睡眠、栄養をしっかり摂って、みなさんどうぞお元気でお過ごしください。

 

 

8月に想うこと

8月 2nd, 2020

今年の梅雨明けは、太平洋高気圧の勢力が弱いことにより梅雨前線が北上しないため、だいぶ遅れてしまいました。また、九州や東北などでは豪雨による河川氾濫等により多くの方が被災され大変なご苦労をされております。あらためて被災された方にお見舞い申し上げますとともに一日も早く普段の日常を取り戻されますことをお祈りいたします。

さて、8月は予科練平和記念館にとっては特別な月でもあります。1945年8月15日は日本が組織的な戦争を終結した日であり、記念館としましても例年無料開館にてお客さまをお迎えしておりましたが、今年は、新型コロナウイルス感染症予防のため、入館に際し事前予約制をとったことにより無料開館を中止とさせていただきました。

例年、8月の土・日曜日とお盆時期は、多くの来館者でにぎわっており、新型コロナウイルスの感染を予防する観点から、1日の入館者を制限してご観覧いただくことといたしました。遅れて授業が再開した小中学生や高校生もやっと夏休みに入り、記念館といたしましても多くの児童・生徒さんに来館いただき、予科練を中心とした町の戦史の記録を学んでいただきたいとイベント等も予定しておりましたが中止とさせていただきました。このような状況の中で記念館を運営いたしておりますことをご理解いただき、ご来館なさる場合は、事前にご連絡をいただきますようお願いいたします。

8月は子供たちにとっても特別な月でもあります。もちろん家庭学習も大切ですが、それにもまして様々な体験をとおし子供たちの成長を促す時期でもあるように思います。海や山に家族と出かけたり、友達とプールで水遊び、クワガタムシやカブトムシの捕獲など、普段できないことを、おもいっきり体験できる月でもあります。私も小学生の頃は毎朝、上級生に連れられてラジオ体操、午前中は学校から出された宿題を懸命に取り組み、午後から友達と毎日、霞ケ浦や林の中を駆けまわり、顔を真赤にして遊んだものです。

今年の夏休みはどのような生活をしているのでしょうか。新型コロナウイルスの影響により、夏休み期間が短縮され、計画していた家族旅行もこの状況の中では自粛せざるを得ないのではないでしょうか。地区のお祭りや町の一大イベントである「まい・あみ・まつり」も中止になり、子供たちの楽しみがなくなってしまったことは、とても残念に思います。

各地で感染者が増えております。大人たちも子供たちもそれぞれに日々の生活の中で新型コロナウイルスを意識しながら生活しなければなりません。感染予防には細心の注意を払い、少しでも思い出深い夏休みを過ごしていただきたいと想うばかりです。

戦後75周年記念展示開催中です

7月 21st, 2020

みなさんこんにちは。

学芸員Yです。

記録的な大雨となり、各地で大きな災害が起きましたね。

ニュースで被災地の様子が映るたびに、自然の強さの前に圧倒されます。

被害にあわれた方はどれほど怖くて、どれほど悔しくて、どれほど無念だったか。

察するに余りあります。

心よりお見舞い申し上げます。

 

 

先日、公益財団法人海原会の専務理事長さんとお話をする機会がありました。

毎年、予科練戦没者慰霊祭を5月下旬に行っていらっしゃるのですが、

今年はコロナウイルスの関係で例年通りの開催は見送り、関係者のみで執り行ったとのことでした。

お写真を拝見しましたが、予科練戦没者の慰霊に真摯に向き合う姿が感じ取れて、

亡くなられた予科練の皆さんも喜んでいらっしゃるのではないかなと思いました。

 

 

また、このような話もしてくださいました。

毎年慰霊祭に出席されている元予科練生の弟さんから、コロナウイルスに関して

国から支給された特別定額給付金10万円を海原会をはじめ各慰霊団体等へ全額寄付する、という

お申し出をいただいたそうです。

 

“特別の被害を受けているわけでない自分が受け取るものではないので、

予科練戦没者の慰霊のために使ってほしい。“

 

この方のお兄さんは1930(昭和10)年に予科練に入隊、

1938(昭和18)年に24歳の若さで大空に散っていかれました。

当時まだ10歳だったこの方に、詳しいことは知らされなかったのかもしれません。

月日が経ち、偶然書店で見かけた本の中にお兄さんの名前を見つけたことがきっかけとなって

本格的にお兄さんの人生と向き合われたようです。

 

お兄さんのご遺品の中には、小さな女の子を抱いたお兄さんの写真と、同じ女の子を抱いた

女性の写真がありました。

諸々の事情で入籍が叶わなかったお兄さんとその女性。

写真は、真珠湾攻撃後の休暇後にたった一度だけ撮られた親子写真でした。

 

女性は再婚し、時間が経つにつれ徐々に縁遠くなってしまいました。

思い立って尋ねあてた時には、女性も、その娘さんも彼岸へ旅立たれた後だったそうです。

 

二人を探す過程で得た写真や遺品をお兄さんのお墓におさめ、

72年ぶりに3人が一緒になったとのことでした。

 

事実は小説よりも奇なりと申しますが、このようなこともあるのだなぁとしみじみ思った

エピソードでした。

給付金の生かし方もすてきだなと思いますし、何よりも、そういうお気持ちを寄せていただくことが

予科練戦没者の慰霊にご尽力なさっておられる海原会さんの力強い後押しになるのではないかなと思いました。

以前のように、一般の方も参加できて、参加者全員で予科練戦没者をしのぶことができる素晴らしい慰霊祭が

早く復活できますように、願ってやみません。

 

 

 

 

さて、予科練平和記念館では、館内20世紀ホールにて「戦後75年交流企画

7つのテーマで知るシベリア抑留 平和祈念展示資料館所蔵資料展」を開催中です。

新宿にある総務省委託平和祈念展示資料館が所蔵している資料を、予科練生の

制服の7つのボタンにちなんで7つのテーマで展示しています。

 

シベリア抑留者とは、戦争が終結したにも関わらず、シベリアを

はじめとする旧ソ連やモンゴルの極寒の地に抑留され、乏しい食事と

劣悪な生活環境の中、過酷な強制労働に従事させられた約57万5千人の方々です。

そのうち、約5万5千人が栄養失調や伝染病などで命を落としました。(チラシより)

 

極寒の地の厳しさ、人間として扱われない不条理さ、その中でも希望を失わずに

故郷へ帰ろうとする人たちの強さが、展示された資料から伝わってきます。

 

 

 

 

現在はコロナウイルスの関係もあり、なかなか以前のように都内まで

気軽にでかけるという感じでもなくなってきていますので、

茨城にいながらシベリア抑留の実物資料が見られるのも、貴重な機会かなと思います。

平和祈念展示資料館の担当の方々が一生懸命作ってくださった展示です。

お近くにお越しの際には、ぜひご覧ください。

 

※予科練平和記念館の入館チケットでご覧いただけます。

 

 

「密」を避ける難しさ

7月 12th, 2020

梅雨あけも間近になり、やっとうっとうしい季節から解放される喜びと、これから訪れる夏の異常な暑さに不安を感じる今日この頃、皆様にはお元気にお過ごしでしょうか。

予科練平和記念館は、新型コロナウイルス感染症対策により長い期間、臨時休館をしておりましたが、6月9日から開館の運びとなりました。

徐々にではありますが、観光事業者の方からの団体予約も入ってきており、「新しい生活様式」の取り組みの中で、社会が少しずつ戻りつつある様子を感じているところです。しかしながら、これから、第2波、第3波と感染拡大の懸念は払拭されたわけではありません、どうぞ、皆様方も「新しい生活様式」の実践を心がけていただき、感染拡大を阻止していただきたいと思います。

当記念館においては、来観者や職員の安全を第一に運営しなければならないことから、コロナ対策として取り組むべきマニュアルや、来観者の皆様へのお願い事を示した掲示物を作成し展示観覧をしていただいておりますが、特に混雑時の「密」を避けた観覧をいかにしていただくかが大きな課題となっております。

予科練平和記念館の常設展示は、予科練の制服である「七つボタン」をモチーフに7つの部屋で構成された展示室からなっております。各部屋の展示観覧を安全にしていただくためには、密を避けるためソーシャルデスタンスの確保が必要となります。原則として1室5名以内での観覧をお願いしているところですが、7部屋ありますので一度に観覧できる人数としては35名までがマックスとなってしまい、団体のお客様を受け入れた場合、一般のお客様が入館できないといった不都合も生じてしまいます。そのため、極力その様なことの無いよう職員も混雑度合を確認しながら、混み入っていない部屋から観覧していただくなど、いかに「密」を避けて観覧していただけるかをその都度判断しながら対応しております。特に土、日、休日は来館者の方が増える傾向にあります。どうぞ来館者の皆様も「密」を避ける意識を持って安全にご観覧ください。

来館者の方には、マスクの着用、連絡先の記入、滞在時間の制限等々、ご不便をおかけしますが、なにとぞご理解・ご協力くださいますようお願いいたします。

これから、暑い夏がやってまいります。熱中症にも十分お気をつけいただき、予科練平和記念館へのご来館をお待ちしております。

Twitterはじめました

6月 24th, 2020

みなさんこんにちは!

学芸員Yです。

急に暑かったりじめじめしたり・・・体調を崩しやすい日が続いていますが、お変わりありませんでしょうか。
人間には少し憂鬱な季節でも植物にとっては気持ちのいい時期のようで、

記念館の周りの木々の緑がいきいきのびのび、ますます濃くなってきました。
小雨が降る日などはさらに緑が鮮やかになり、館内から見ているととても癒されます。

 

 

 

昨日は沖縄慰霊の日でしたね。

日中、品の良い小柄な年配のご婦人が記念館にお見えになりました。

帰り際にぽつりと「戦後の生まれの私にとっても、胸にくる内容でした」とおっしゃり、

小さく頭をさげてお帰りになられました。

戦時の記憶を伝えていくということがどういうことなのか、

75年という年月がどのようなものなのか、考えさせてくださったお客様でした。

 

今年は戦後75年という節目の年ということもあり、

マスコミの方からのお問い合わせを結構いただいています。

記念館自体の取材ではなくて、元予科練生を紹介してほしい、といった内容が多いです。

ご紹介できる方が、私が以前記念館に勤務していた7年前よりも、がくっと減ってしまっていることに

改めてさみしさを感じています。

 

さて、予科練平和記念館は今月9日(火)に再開することができました。

新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため、館内では各展示室に定員を設けたり、

ソーシャルディスタンスの確保をお願いしたりしておりますが、

お客様がこころよくご協力くださり、大変ありがたく思っております。

 

お客様のご協力が得られていることと、今は1年の中でもお客様が少ない時期だということもあり、

新型コロナウイルス対策がなんとか取れている状況ですが、

これから団体でいらしてくださるお客様が増える時期ですので、

どのようにしたら安全を確保できるのか、模索を続けています。

 

その一環として、ご来館くださるお客様にマスクの着用をお願いすることが決まりました。

暑い時期にマスクをお願いするのも心苦しいところですが、ご協力いただけましたら幸いです。

 

また、館内の人数によっては入場制限をさせていただく場合がありますので、

状況を早く細かくお伝えできるよう、Twitterをはじめました。

基本的には開館中の情報をお伝えする予定ですが、

せっかくのTwitterなので、たまに館の様々な情報をはさんでいこうかなと思っております。

 

予科練平和記念館公式ツイッターはこちら

↓↓↓

https://twitter.com/yokarenpmm

 

 

また、Facebookのページは以前からありましたが、不具合が生じたため

新しいアカウントで再始動いたしました。

 

予科練平和記念館公式Facebookはこちら

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https://www.facebook.com/people/%E4%BA%88%E7%A7%91%E7%B7%B4%E5%B9%B3%E5%92%8C%E8%A8%98%E5%BF%B5%E9%A4%A8/100052365353925

 

もしお暇なときがありましたら、ご覧いただければ幸いです。

 

このブログを更新しているときに、とても嬉しいことがありました。

以前一緒に予科練平和記念館で働いてくださった仲間が来てくれたのです。

7年ぶりの再会でしたが全くお変わりなく、当時の話もできてとても心和むひと時でした。

現在は民生委員をやっていらっしゃるそうで、その関係で海軍の資料を託されたとのことで、

記念館に寄贈してくださいました。

こうしてつながりがまた一つ再生されたのが本当にうれしくて、元気がでました。

ちょうど今日はOさんと一緒に働いてくださっていたTさんも勤務されていたので、

プチ同窓会のようで楽しかったです。

 

Oさん、来てくださってありがとうございました!

これからもどうぞよろしくお願いします!