イベント報告・歴史調査委員講演会

11月 22nd, 2011

 秋も深まってきました。テレビで北国の雪を見るようにもなると、関東の暖かさがありがたく思えます。予科練平和記念館がある阿見町にも筑波山から冷たい風がやってきますが、積雪がないということは本当に恵まれていると断言できます。

 皆さん、元気に動き回りましょう。

 

 さて、去る11月20日(日)に予科練平和記念館歴史調査委員講演会「連合艦隊司令長官 山本五十六元帥が阿見町に残したもの」が開催されました。多数の方に来ていただくことができました。ありがとうございました。

 

 

 講師は井元潔氏に務めていただきましたが、以下に講演の概要をお伝えします。

 

 

◇山本五十六とは

※1884年(明治17年)旧長岡藩(新潟県長岡市を中心とする)の儒学者であった高野家に生まれる。

※1916年(大正5年)旧長岡藩家老山本家の養子となる。長岡精神(文武両道、質実剛健、常在戦場、米百俵)を堅持した。

※1919年(大正8年)から2年間アメリカに駐在しハーバード大学に留学するなどの経験もあり、アメリカのことをよく知っていた。

※1924年(大正13年)霞ヶ浦海軍航空隊副長兼教頭となる(階級は大佐)。航空戦力の重要性に早くから気付き、海軍航空戦力の育成と発展に尽くした。

※1925年(大正14年)アメリカ大使館付武官として任官。(霞ヶ浦海軍航空隊には約1年3ヶ月いたことになる)

※日独伊三国軍事同盟締結、すなわちアメリカとの戦いに生命を懸けて反対した。「…現在、世界を見渡して、飛行機と軍艦では日本が先頭にたっていると思うが、しかし、工業力の点だけは全く比較にならぬ。米国の科学水準と工業力を併せ考え、また、石油のことだけをとってみても、日本は絶対に米国と闘うべきではない。…」(太平洋戦争開戦の2ヶ月半前、長岡中学同窓会における講演)

※連合艦隊司令長官として太平洋戦争の海軍を指揮し、1943年(昭和18年)4月18日ブーゲンビル島上空で戦死。

 

◇山本五十六元帥が阿見町に残したもの

1[霞ヶ浦海軍航空隊副長時]大正13~14年

※土浦市全国花火競技大会の開始・霞ヶ浦海軍航空隊海軍航空殉職者供養塔の建立

 山本大佐(当時)は・規律の刷新・航空事故防止施策・航空殉職者慰霊に力を注いだ。神龍寺の隣接地に住んでいた山本大佐は住職の秋元梅峰和尚と懇意になり、和尚の助言などもあって殉職者慰霊のための花火大会などを実現した。

※霞ヶ浦神社建立

 山本大佐は訓練中の事故などによる殉職者を少なくすることに腐心し、また、殉職者の慰霊に努めた。(靖国神社に祀られない殉職者慰霊)

 

 

※霞月楼との交流

 山本大佐は賭け事や将棋など遊びが好きな一面をもっていた。お世話になった霞月楼(土浦市)の2代目堀越正雄・満寿子夫妻には太平洋戦争開戦前夜に手紙(「…最後の御奉公に精進致居」の文言がある)を送っている。

 

2[航空本部長時]昭和11年

※搭乗員選抜に手相骨相を導入(霞ヶ浦海軍航空隊)

 

3[戦死後]昭和18年~現在

※山本五十六全身像建立

 山本五十六全身像は昭和18年12月に土浦海軍航空隊本部前・号令台横に建立された。予科練とは直接関係しなかった山本五十六像が土空に建立された理由について、昭和天皇の義理の兄・久邇宮朝融王(くにのみやあさあきらおう)の意向が強く反映されているのではないか、と井元氏は考えている。(予科練を含む練習連合航空隊司令長官であり、山本五十六との親交も深かった久邇宮朝融王は現在の稲敷市大日苑から土浦海軍航空隊へ通っておられた)

 

 

※常在戦場碑建立

 山本五十六が昭和10年に郷里長岡にて揮毫した「常在戦場」の碑は、昭和19年に土浦海軍航空隊内にあった土浦神社に建立された。その後、転変を経て、昭和35年に山本五十六元帥像があった台座に移され現在に至っている。

 

 山本五十六も1人の人間であり、公私それぞれにおいて長所・短所ない交ぜになった生き様を見せたものかと思います。しかし、人の上に立つ者が必ずと言っていいほどに備えている「人、特に弱者を思いやる心」を持ち、「現実を冷静に把握・分析し、行動の方針を立てる」ことができた人間のように私には感じられます。そして「勇気をもっていた」ことは、軍人であろうとなかろうと難しいことであると考えると、やはり尊敬の念が湧いてくるのです。

 

 歴史上の大人物の1人が阿見町に足跡を残してくれていることは阿見町にとってたいへん幸運なことです。

 残された形には必ず人の心が付き添うものですが、よい形にはよい心が刷り込まれているものです。皆様も山本五十六元帥が残した遺産を目にすることがあったときは、その人の心に是非思いを馳せていただきたく思います。

  今後も予科練平和記念館では各種の講演会を開催していく予定です。どうぞまた、当記念館に足をお運び下さい。